植林やアグロフォレストリーなどのフィールド活動を中心の事業を行うコミュニティでは、必ず環境教育も同時に行っています。
「コーディリエラ山岳地方で起こっている環境問題とは?」
「エコシステムとは何か?」
「自然を痛めつけるとどんな風に暮らしに影響があるか?」
「コーディリエラ地方がどれだけ豊かな自然資源を持っているか?」
「山岳地方の貴重な生態系とは?」
などをテーマにセミナーやワークショップで伝えています。
とくに演劇やアートを使った子どもや若者たちへの環境教育、幼児向けの野外自然教室などに力を入れています。
また、学校の授業の中で環境教育を取り入れて行けるように、教員向けの環境教育プログラムも行っています。講師は、日本人とフィリピン人のアーティストや環境教育ファシリテイタ―たちです。
CGNがとくに力を入れているのは、演劇を活用した環境教育です。先住民のコミュニティの祭りでは,みなで即興で歌ったり踊ったりする習慣があります。険しい山の中で暮らす先住民の人々の身体能力は大変高く,また即興での表現能力は秀逸です。CGNは先住民が環境問題を自分たちの問題として考え、話し合い、解決方法を見出すために,コミュニティ・シアターを活用していくのはたいへん有効と考えました。
CGNのワークショップではさまざまな演劇教育のメソッドを環境教育に応用しています。
先住民に伝わる民話には自然と共生する叡智を伝える物語がたくさんあり、語り部によって語られた民話をベースとしてワークショップで演劇を作ることもあります。また、森林破壊や水不足、鉱山開発による環境破壊などを調査し、話し合いながら演劇作品を作るというワークショップも数多く行っています。観客も参加し、一緒に環境問題を解決する方法を考える「フォーラム・シアター」という手法も取り入れています。
ワークショップで制作した演劇作品はコミュニティで発表し、より多くの人に地域の環境問題を伝える場としています。
また、今までに、バギオやマニラでも発表の機会を得てきました。
2011年には日本にも環境教育研修を兼ねたツアーを行い16人の先住民の青少年たちが山梨県と愛知県で演劇発表を行いました。
2017年からはインドネシア・スマトラ島アチェにも、このプログラムの事業地を拡大し、演劇を活用したワークショップを日比インドネシアのファシリテイタ―とともに実践しました。
2011年5月名古屋市東海高校での演劇発表
いままでに、CGNが主催した演劇による環境教育ワークショップに参加した青少年たちのグループを「Aanak di Kabiligan」(山の子供たち)と呼び、継続して環境ワークショップの機会を持ち,将来のコミュニティの環境リーダー育成に努めています。
2016年8月に行った鉱山開発による環境問題を調査して制作した演劇の発表会
(マウンテン州タジャン町カヤン村」)
■事業期間:2013年4月~2016年3月
■助成:独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金
2012年~2013年に地球環境基金の入門助成を受けて実施した「フィリピン・ルソン島北部山岳地方における子供のためのアートを活用した環境教育モデル事業」では、マウンテン州サバンガン町の小学校とハイスクールの生徒を対象に、アートや演劇などを取り入れた体験型の環境教育ワークショップを行い、そのアウトプットとして「Kawawanan Batawa Eco Festival」を開催しました。ファシリテイタ―には日比のアーティストを採用し、既存の環境教育手法ではなく、事業地の自然条件や環境問題、暮らし、文化を考慮したワークショップ・プログラムの開発を行いました。
2013年度からの3年間の事業では、2012年度の経験を踏まえ、インパクトの大きかったワークショップの手法をさらに発展させ、マウンテン州の3つの町の保育園、幼稚園、小学校、ハイスクールの教員向けにワークショップを行いました。ワークショップに参加した教員たちが、それぞれの地域の学校で継続的に環境教育ワークショップが行われることを目的としました。
事業地は1年目はサバンガン町、2年目はバーリグ町、3年目はバウコ町。ファシリテイタ―には日比のアーティストや専門家を招聘し、1年間の事業の最後には、教員が各学校で生徒を対象に実践したワークショップで持ち寄った作品の展示と発表を行いました。
●2012年度に開催した講習会&ワークショップのリスト➡
●2013年度に開催した講習会&ワークショップのリスト➡
●2014年度に開催した講習会&ワークショップリスト➡
●2015年度に開催した講習会&ワークショップリスト➡
■事業期間:2014年4月~2017年3月
■助成:りそなアジアオセアニア財団
CGNの行ってきた環境教育ワークショップの中でも、オリジナルの手法として定評のあった演劇を活用した環境教育ワークショップをさらに定着、発展させることを目的とした事業。より具体的な環境問題をテーマとし、コーディリエラ山岳地方で演劇によるワークショップをファシリテイトできる人材を育てていくことも目指した。ファシリテイタ―には、社会問題を扱った応用演劇ワークショップの指導者として第一人者の花崎攝氏をメインに迎え、3年間実施した。
1年目はカリンガ州ティグラヤン町、マウンテン州サバンガン町、イフガオ州キアンガン町の3か所、2年目はマウンテン州ボントク町で開催した。3年目はさまざまな先住民族の青少年を集めてベンゲット州とマウンテン州の鉱山開発地域を取材しながらワークショップを通して演劇作品を制作した。
事業では、1年目は演劇作品のために収集した民話を絵本として出版、2年目は環境問題の解決方法を演劇ワークショップを通して考えるための「フォーラムシアター」の手法を記録したDVDを制作、3年目はモノローグによって構成された鉱山開発問題に関する公演とフォーラムシアターの記録ビデオ「Mining Stories」を制作した。
■事業期間:2017年4月~2021年9月
■助成:国際交流基金アジアセンター
■パートナー団体:総合地球環境学研究所/シアター&アーツうえだ/Komunitas Tikar Pandan(KTP)
CGNは地域の環境問題を洗い出しその解決策を考える場を創出するために演劇ワークショップを活用してきました。経済発展著しいアジア各国の地方では、フィリピン同様に開発による様々な環境問題が起こってますが、経済発展の陰に隠れ、その実態はなかなか表に出ません。また、インターネットが普及してきているとはいえ,遠隔地に暮らす人々には環境問題の日常生活への負の影響を知らされる機会が限られているといえるでしょう。本事業では、豊かな森林資源と野生動物の宝庫と言われるインドネシア・アチェで活動するNGO「Komunitas Tikar Pandan」をパートナーとし、CGNが継続してきた演劇を応用した環境教育ワークショップをアチェでも実践しました。
手法としては、参加者の青少年たち自身が地域の環境問題を聞き書きインタビューにより取材し、それをモノローグ・テキストとして起こし,それらを中心に据えて演劇作品にすることとしました。
事業1年目の2017年度は鉱山開発をテーマに、コーディリエラ山岳地方のさまざまな民族の青少年が参加者となり演劇制作をし、バギオ市とマニラで発表公演ののち、アチェにて公演とアチェの高校生とともに演劇ワークショップを開催しました。
2018年度は,ユネスコ世界文遺産と同時に国連FAOの世界農業遺産に指定されているイフガオ州において「伝統農法」をテーマに,まずはイスクールの教員向けの演劇ワークショップを実施し,その後教員たちはそれぞれの高校でその手法を実践しました。州都ラガウェのドンボスコ・ハイスクールで行われた最終発表には,8つのハイスクールがそれぞれの地域の農業問題をテーマとした演劇作品で参加しました。2019年1月―2月にはアチェのKomunitas Tikar Pandan(KTP)のメンバーとファシリテイタ―が、イフガオ州とマウンテン州を訪問してワークショップを開催しました。(共催:総合地球環境学研究所/トヨタ財団)。
また,事業に参加したイフガオ州の演劇ワークショップ・ファシリテイタ―たちは、2018年10月長野県上田市の「街中演劇祭」に招聘され、棚田をテーマとした演劇発表と日本の参加者を交えた上田市の棚田をテーマとしたワークショップを行いました。
2018年10月、長野県上田市犀の角劇場主「PAYO-棚田をめぐる物語」公演
2020年3月にCOVID-19の感染拡大を抑えるためにフィリピンでは全土でロックダウン(都市封鎖)が行われ,この事業の3年目は実施できなくなりました。何度か延期をしましたが,当初の予定通りの実施は難しいと判断し,2021年4月から内容を大幅に変更し,オンラインによるファシリテーションやセミナーを含めたプロジェクトとして実施しました。最終的なアウトプットもオンラインで行い3か国の青少年がそれぞれの国で制作した演劇作品をビデオで鑑賞しあいました。このオンラインを駆使したプロジェクトは「FOLKTALES-Community Theater Workshops for the Environment-Indonesia/ Philippines /Japan」として出版されました。
この事業は3年間(COVID-19で延期したため終了までは4年半)を通して,花崎攝氏がメインファシリテーターを務めました。